相続の発生
相続は人が亡くなった時に開始します。
英米法系の国では、管理清算主義といって、遺産が少額である場合を除き、裁判所を通して精算のための手続を採らなければならないことがあります。
これに対して、日本は包括承継主義といい、相続の開始によって、遺産が直ちに相続人に承継されると考えます。従って、日本の民法下では、亡くなった方の遺産の処理には、必ずしも裁判所の関与は必要ありません。
誰が相続人になるのか
誰が相続人になるのかは、法律で定まっており(法定相続人)、勝手に決めることはできません。
まず、亡くなった方に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。
配偶者に加えて、血族の関係にある人が相続人になります。これは優先順位が決まっています。
①第一順位 子(及びその代襲相続人)
②第二順位 直系尊属
③第三順位 兄弟姉妹(及びその代襲相続人)
上位の順位者がいる場合は、下位の人は相続人になりません。
また、同順位の人が複数いれば同順位者として全員が相続人になります。たとえば、亡くなった方に3人の子どもがいれば、その3人ともが相続人になります。
配偶者がいなければ、①~③のうちの最上位者のみが相続人となります。
誰が相続人になるかは戸籍謄本で確認することになります。
※一定の事由がある場合は、法定相続人にあたる人が相続人として認められないことがあります(欠格、廃除)。また、相続を望まない場合は、法定相続人であっても相続放棄をすることができます。改めて説明します。
相続分(法定相続分)
相続人が2人以上いる場合は、その分配が問題となります。相続分といい、これも法律で定まっています。
①配偶者と第一順位の相続人(子及びその代襲相続人)がいる場合・・・1/2ずつ
②配偶者と第二順位の相続人(直系尊属)がいる場合・・・配偶者が2/3、直系尊属が1/3
③配偶者と第三順位の相続人(兄弟姉妹及びその代襲相続人)がいる場合・・・配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4
子や直系尊属、兄弟姉妹やこれらの代襲相続人が複数いれば、同順位者の相続分は均等です。
従って、例えば①で子が3人いた場合、配偶者が1/2、子はそれぞれ1/6ずつの相続分となります(子3人合わせて1/2)。
遺産分割
ただし、相続人の範囲と異なり、遺産をどのように分割するかについては、法定相続分に縛られることなく相続人の間で話し合って決めることができます。相続人が複数いる場合(共同相続人といいます)、相続人で話し合って遺産の分け方を決めることを遺産分割協議といいます。
話し合いがうまく進まないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
遺産は、現金、預貯金、有価証券、不動産、動産等、様々な形で残っていますし、負債もまた遺産です。
分け方が難しかったり、相続人が多数にわたる場合や不仲の場合など、協議のみではまとまらないことも多く、そのような場合は遺産分割調停の申立てをおすすめします。
遺言
ここまで「法定相続人」と「法定相続分」について説明をしましたが、被相続人が亡くなる前に遺言を書くことで、法定相続人以外の人に遺産を渡すこともできますし(遺贈)、法定相続分とは異なる遺産分割方法を定めておくこともできます。
遺産は、元々は生前の被相続人のものですので、処分にあたってはその意思を尊重すべきです。死後に自分の財産を誰にどう分けるか、生きているうちに遺言を書くことで決められるわけです。