『現代ネパールを知るための60章』が刊行されました。

2020年5月20日、エリアスタディーズ・シリーズ「現代ネパールを知るための60章」(明石書店)が刊行されました。

私は「第9章 新憲法の特徴と法の整備」を執筆しています。

エリア・スタディーズシリーズのネパール編の改訂は実に20年ぶりのことです。

ネパールの事情を多彩な切り口から広く扱った類書はなく、長らく改訂が待ち望まれていました。

2017年、私がネパールに赴任する際にも改定前(2000年発刊)の「ネパールを知るための60章」を購入して勉強したのですが、充実したコンテンツには目を見張ったものの、やはり情報の古さだけはどうしようもありませんでした。

何しろ、発刊翌年の2001年に王宮で王族10人が射殺される事件が起き、2006年には10年に及ぶ内戦が終結、王政そのものを廃止し、翌年に公布された暫定憲法の下で連邦民主共和制に転換、その後延々続く政治的混乱の中、2015年の大地震、そして同年新憲法公布…と、2000年代に入ってからのネパールはまさに変化と動乱のただ中を走ってきました。

私が赴任する2017年は、この劇的な変動の果てに、遂に新憲法の下で初めでの正式な議会選挙が行われるというタイミングでした。

2020年に刊行された新しい「現代ネパールを知るための60章」は、この歴史的な転換点を経て産声を上げた新しいネパールの姿を、専門家達がそれぞれの専門的知見を持って切り取ったものになります。

ネパールの基本知識を広く集約した入門的テキストとして今後長く読まれていくことが期待されます。

この20年の間に、ネパールでは憲法も政体も行政区分も宗教の位置づけも劇的な変貌を遂げており、新しい国のかたちの根幹を解説する「第9章 新憲法の特徴と法の整備」は同書の目玉の一つとなっています。

https://www.akashi.co.jp/book/b512240.html?fbclid=IwAR1hcUQEmHIW_6y4vnF8GGMSVlLLjDXNHCJ4cGm_9Hh6N5awfRhk8vcpLnM

【目次】

はじめに――大変動の21世紀ネパール

Ⅰ ネパール概観

第1章 地域的多様性と変容する社会――ヒンドゥー王国から連邦民主共和国へ
第2章 地域間流動の視点から見るネパールの人口構造――グローバル化時代の内陸山間国家の行方
第3章 エベレストに見るネパールの登山とトレッキングの将来――――持続可能な山旅観光へ
第4章 変わるネパールの観光――国内旅行客の増加
第5章 世界遺産と文化財――ネパールを象徴するものをめぐる動き
第6章 国際関係――インド、中国、欧米

Ⅱ 現代政治の激動

第7章 農民を中核としたネパールで最初のマオイスト運動――共和制の実現と議会における包摂へ
第8章 包括和平合意から憲法制定にいたる10年――政権をめぐる対立で遅れた憲法の制定
第9章 新憲法の特徴と法の整備――法の理念と運用のギャップ
第10章 法と紛争解決――紛争とその解決から見るネパール社会
第11章 連邦制の行方――マデシの要求を中心に
第12章 王制廃止後の宗教状況――伝統文化保全運動の現在と展望

Ⅲ 経済の変化と海外労働

第13章 経済変化――困難な自然・政治環境の中で成長を目指す
第14章 外国投資――外国直接投資を通した経済成長の課題
第15章 出稼ぎの先兵――グルカ兵とゴルカ兵
第16章 グルカ陸軍退役軍人組織の運動――個人的な追想と現状
第17章 移住の増加――日本におけるネパール人の暮らし
 【コラム1】日本のネパール料理店
第18章 湾岸諸国での就労――単純労働だけでない多様な選択

Ⅳ 開発・農業・インフラ

第19章 開発の概要――開発計画の70年
第20章 農業――その制約と可能性
第21章 地域農業開発――住民目線で継続した協働支援を!!
第22章 農業協力――ネパールの農業技術協力の夜明け
第23章 電力事情――国内唯一の天然資源である水資源を活用した水力発電開発に特化して
第24章 水事情――カトマンズ盆地内の給水事情
第25章 災害――持続可能な開発に不可欠な自然災害リスク削減

Ⅴ 保健医療

第26章 医療の現状と保険制度――増える生活習慣病と国民健康保険制度の歩み
第27章 感染症事情――克服されつつある感染症と新たな問題
第28章 リプロダクティブ・ヘルス――ポカラ市北部地域の女性たちの声から
第29章 へき地医療――岩村先生の思い出とタバン村近況

Ⅵ 教育

第30章 学校制度と教育行政――政府の教育開発への取り組み
第31章 子どもたちと学校――基礎教育の現状と課題
第32章 高等教育――ネパールの大学の現状と課題
第33章 ノンフォーマル教育――女性のための識字教育を中心に
第34章 日本のОDAによる教育支援――より良い教育を子どもたちに
第35章 日本のNGОによる教育支援――校舎建設と防災教育
 【コラム2】縮小する市民社会とNGОのスペース――政府の管理強化の中で

Ⅶ ジェンダー、社会的包摂

第36章 ジェンダー――平等の実現に向けて
第37章 複雑化する人身売買への対応 ――被害を乗り越えたサバイバーによる活動
第38章 チベット難民――ネパールに居場所を求めた人々の現在
第39章 被差別カーストの人権をめぐる状況――「ダリット」による解放運動
 【コラム3】カースト的慣習とその変化――不可触制に基づく差別
第40章 ようやく始まった社会保障制度の構築――包摂的な社会に向けて
第41章 障害者をとりまく現状――社会参加の進展をもたらした新たな制度

Ⅷ 時代への対応:少数民族、宗教

第42章 諸民族の多様な選択――「カースト/民族」人口、運動、宗教
第43章 マラリアの平野から――タルーの覚醒
第44章 都市の食生活の変化とカースト――カドギたちによる起業
第45章 シェルパの変容――ヒマラヤ観光を生きる人々
第46章 チェパンのキリスト教入信と世代間の断絶――シャマニズム的伝統と新たな信仰のはざまで
第47章 キリスト教と近年の諸問題――活気づく教会と宗教間関係の行方

Ⅸ 生活の場、文化からの対応

第48章 情報通信技術の普及 ――小さな非営利組織の挑戦
第49章 生活の場の変化――内戦・地震と山地の人々の対応
第50章 山地から内タライへ移住したプン・マガルの語り――生き方を方向付けるモノ
第51章 半世紀で変わったこと――グティと私とネワール社会
第52章 祭り、儀礼、慣習――その変化
 【コラム4】クマリ
第53章 ネパーリー・チャルチットラ――ネパールの映画・映画館
第54章 21世紀のネパール文学――より広く、より平易に
 【コラム5】多様な布の芸術――美しさと実用性の智恵をみた

Ⅹ 伝統と信仰

第55章 ネパールのヒンドゥー教――信仰と日常的慣習
第56章 ブッダの故郷を探して――激動の時代を経て生まれた先駆的なブッダ思想
 【コラム6】ルンビニとティラウラコートの最新調査――釈迦族の王城はどこか?
第57章 景観を読み解く――『王統譜』が語るカトマンズ盆地の成り立ち
第58章 伝統が残る唯一の場所――儀礼の中に生きるサンスクリット経典
 【コラム7】梵語写本
第59章 人の数よりも神の数が多い盆地――多様・多重な信仰
 【コラム8】観音・マツェンドラナート信仰
第60章 民間信仰の諸相――霊媒による問題の診断と解決

編者あとがき
現代ネパールを知るための参考文献

タグ ネパール 法整備支援